J-STAGEでのオープンアクセスと認証なし(フリー)ってどう違うの??

J-STAGE, 2022.08.31

お久しぶりです、たけぞーです。

たけぞーは本当にカフェ(喫茶店)で働いていたことがあるのですが、暑い時期は水出しアイスコーヒーがとても飲みたくなります。名前のとおり水で抽出しているので通常お湯で抽出するドリップコーヒーとは違う、さっぱりまろやかな味が夏っぽくて好きです。いつもドリップコーヒーしか飲んでいない方も是非飲んでみてください。

さて、このままコーヒーの記事になってしまう前に本題に入ろうと思います。今回はJ-STAGEでの認証設定、その中でも「オープンアクセス」と「認証なし(フリー)」についてをテーマにお届けします!

J-STAGE全体の認証の状況

現在J-STAGEでは多くの資料が公開されています。執筆時点で3,613誌が公開されており、そのうちの3,138誌が閲覧制限されていない資料となります。

記事単位でみてみると543万9,880記事が公開され、そのうちの517万8,144記事が閲覧制限されていない記事となります。これだけ多くの記事が無料で閲覧できるのは嬉しいですね。

ちなみにJ-STAGEでは認証種別として「認証なし(フリー)」「認証あり」「オープンアクセス」の3種類から設定する事ができますが、認証種別資料数は資料トップに表示されている「オープンアクセス」や「フリー」のアイコン情報が使用されているようです。また閲覧制限されていない3,138誌の内訳は、「オープンアクセス」が308誌、「認証なし(フリー)」が2,830誌となっていてオープンアクセスは約10%ほどにとどまっているようです。

この情報についてはJ-STAGE上で公開されている公開データの「J-STAGE登載誌一覧」からダウンロードできます。興味のある方はリンク先のZipファイルをダウンロードして、Excelなどに貼り付けてご覧ください。

オープンアクセスと認証なし(フリー)の違い

さて、オープンアクセスと認証なし(フリー)についての違いについて、曖昧になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

オープンアクセスも認証なし(フリー)も「無料で閲覧できる」という点については同じです。J-STAGEでもどちらの記事も購読者番号を求められることなく閲覧は可能ですが、オープンアクセスは2002年に公開されたBudapest Open Access Initiativeにて、下記のように定義されています。

「オープンアクセス」とは、それらの文献が、公衆に開かれたインターネット上において無料で利用可能であり、閲覧、ダウンロード、コピー、配布、印刷、検索、論文フルテキストへのリンク、インデクシングのためのクローリング、ソフトウェアへデータとして取り込み、その他合法的目的のための利用が、インターネット自体へのアクセスと不可分の障壁以外の、財政的、法的また技術的障壁なしに、誰にでも許可されることを意味する。複製と配布に対する唯一の制約、すなわち著作権が持つ唯一の役割は、著者に対して、その著作の同一性保持に対するコントロールと、寄与の事実への承認と引用とが正当になされる権利とを与えることであるべきである。

BOAI10 Japanese Translation プロローグ:10年後のブダペスト・オープンアクセス・イニシアティヴ

無料で閲覧可能であることに加えて、著作権についての内容が記載されており自由な再利用ができることがあげられています。自由な再利用についてはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス等にて二次的利用の範囲を示すことができます。

このあたりはJ-STAGEセミナー「信頼されるオープンアクセスジャーナルの要件とは」に参加した方の参加報告記事もありますので、目を通していただけると嬉しいです!

J-STAGEでオープンアクセスとするためには

J-STAGEの利用規約にはオープンアクセスの定義として「インターネット上に論文等を無料公開し、二次的利用の範囲に関するライセンス情報を明記することで、誰もが障壁なく閲覧・利用できること」と定めています。やはりここでも無料で閲覧できることに加えて、二次的利用の範囲に関するライセンス情報の表示が必要となってきます。

これらを踏まえてJ-STAGEでオープンアクセスの設定をする場合には下記の2点が必要なのかと思います。

  1. クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを公開記事に付与していること
  2. 二次利用の範囲を定め学会サイトや投稿規定などで掲載していること

 

J-STAGEでは各記事ごとにCCライセンスの表示が可能ですが、CC ライセンスのライセンスマークは視覚的にも見やすく、文字の情報よりも認識されやすいのではないかと思います。J-STAGEでは著作権情報の表示がグレーの文字で表示されるので、もし二次利用の範囲をテキスト情報として表示するのであれば、CCライセンスを表示したほうが見やすいですね。

J-STAGEの著作権情報表示例

また「このジャーナルではどの範囲まで自由に二次利用できるのか」といったところもきちんと発行機関で定めて投稿規定や学会サイト、あるいは学会誌のお知らせ記事として掲載するなど広く知らせることも必要です。

特に過去の掲載記事も含めてオープンアクセスとするときには、元から発行機関に著作権を譲渡している場合でもお知らせをした方が後から問題になることはないかと思います。

J-STAGE上でこれからオープンアクセスにすることを検討している発行機関向けの資料として「J-STAGE 登載ジャーナルのためのオープンアクセスガイド」が公開されていましたので、もっと詳しく知りたい方はこちらを見ていただくとより一層理解が深まるかと思います。

ということで、この2点に該当しない場合で閲覧制限をしていない資料は「認証なし(フリー)」になる、ということになります。

J-STAGEでのオープンアクセスと認証なし(フリー)の違いとしては、閲覧者等が二次利用をする際に予め記事にCCライセンスを表示して「ここまでは自由に使用していいですよ」とするのか、「著作権元に必ず確認する必要がある」のか、という点です。こう書くとなんとなくイメージできたのではないでしょうか。

これまでの内容を下記の表にまとめてみました。

オープンアクセス 認証なし(フリー)
本文へのアクセス 本文も無料で閲覧可能 本文も無料で閲覧可能
CCライセンス 表示あり 表示なし
二次利用時 CCライセンスで定めた範囲内は自由に使用可能 著作権元に確認が必要

 

J-STAGEはオープンアクセスを推奨している

ところで、J-STAGE自体がオープンアクセスを推奨しているのはご存じですか?

J-STAGEの発行機関向け利用規約第1条には、「J-STAGEは日本の科学技術刊行物の国内外への情報発信及び流通を促進し、またオープンアクセスを推進することを目的とします。」と定められています。また、利用機関に対しても「J-STAGEを活用することで、オープンアクセスに積極的に取り組み、円滑な運営とJ-STAGEの品質向上を目指すJSTの取組みに協力する」という記載があり、第3条ではJ-STAGEで公開したい場合には「オープンアクセスの実現に積極的に取り組めること」を挙げています。このように、運営元であるJSTとしては、J-STAGEを利用することでオープンアクセスに積極的になってもらいたいのですね。

J-STAGE上でオープンアクセスの設定ができるようになったのは、2014年7月下旬に公開記事へのCCライセンス表示ができるようになったことかと思います。この頃はまだデフォルト設定としてあくまでもジャーナルごとに1つのCCライセンスが表示できる、という状態だったようです。記事ごとにCCライセンスの表示が可能になったのは2019年3月下旬にJATS1.1へのバージョンアップがされた頃になります。この新機能リリース以降、記事ごとにCCライセンスの設定が可能となり、発行機関で定めたいくつかのCCライセンスを著者が1つ選べる場合などにも対応しているようです。

現在J-STAGEの利用申込をする際にオープンアクセスを選択した場合は、ポリシーの有無の入力が必須になっており、またCCライセンスを表示するかどうか、という項目もありました。ただ、どのライセンスを表示するのかというところまでは特に聞かれていないようです。
認証期間の選択もエンバーゴ期間と認証期間を合わせて24ヶ月までしか入力できなくなっています。やはりオープンアクセスを推奨していることからあまり閲覧制限はかけてほしくないのでしょうね。

 


J-STAGEでの「オープンアクセス」と「認証なし(フリー)」の違いについてお届けしました。J-STAGE上での設定は記事認証設定でオープンアクセスにしたからCCライセンスが必ず表示される、という仕様ではないのでもしかすると正しい状態になっていないジャーナルもあるのではないかと思います。

J-STAGEに公開している目的として、ジャーナルが広く閲覧されるために閲覧機会を増やしたい、というところが多いと思いますが、そうであるならば、正しい情報で正しく閲覧者が二次利用できることが大切ですね。

次回の記事もお楽しみに~~