J-STAGEの研究報告書・技術報告書の公開動向

J-STAGE, 2022.11.15

こんにちは、いづいです。先日、ロード・オブ・ザ・リング3部作のIMAX版を見てきました。20年も前の作品ですが、さらにこれをきっかけに原作も読み返したりと、時を経て過去を振り返ってみるというのも面白い体験だなと感じました。
さて、そんなわけで今回は過去の2018年にとりあげたブログ「学術コンテンツをお持ちの発行機関様向け J-STAGEで公開可能なコンテンツのご紹介」のその後、についてです。以前のこのブログ記事では、J-STAGEで公開可能となったジャーナル以外のコンテンツ種別を紹介しましたが、今回はさらにそこから4年たった今の状況についてとりあげます。

J-STAGEのコンテンツ種別ごとの公開状況

休刊・廃刊を考慮していない数字ですが、この4年前のブログのときからJ-STAGEでの全資料数は2,714から3,658に増加(増加率34.8%)しています。これをコンテンツ種別ごとに見てみると下表のような数字です。研究報告書・技術報告書が突出して高い増加率であることがわかります。

コンテンツ種別 2018年11月 2022年11月4日 増加率
ジャーナル 2,354 3,082 30.9%
会議録・要旨集 269 323 20.1%
研究報告書・技術報告書 61 198 224.6%
解説誌・一般誌 29 53 82.8%
その他 1 2 100.0%

研究報告書・技術報告書の分野

この研究報告書・技術報告書は「特定の機関の研究、技術開発、調査の中間成果、活動成果を研究者、技術者向けに広く流布させることを目的として刊行される雑誌、報告書など。」とされていますが、J-STAGEでは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
J-STAGEの資料名検索機能を利用して、研究報告書・技術報告書はどのような分野を扱った資料か、分布を調べてみました(複数分野を扱う資料もあるので合計値は研究報告書・技術報告書の全資料数198より大きくなります)。

基礎医学系 60
ライフ系 77
医学・保健衛生系 42
工学系 67
学際科学系 83
人文・社会科学系 134

(2022年11月4日公開資料数での調査)

人文・社会科学系の資料が3割弱を占めているようです。J-STAGEではいわゆるジャーナルが3,082資料公開されていますが、その分野分布と比較してみます。

J-STAGE公開ジャーナルの分野分布

(2022年11月4日公開資料数での調査)

ジャーナルでの分野分布と比較すると、研究報告書・技術報告書では以下の傾向があるようです。

  • 人文・社会科学系の比率が10ポイント程度多い
  • 医学・保健衛生系の比率が10ポイント程度少ない
  • それ以外の分野についてはジャーナルでの分野分布と大体同じ

研究報告書・技術報告書の資料の中身

細かく見ていくと、研究報告書・技術報告書198資料のうち資料名に「専門学校」を含む資料が15、「大学」を含む資料が49で、合わせると27%を占めていて、教育・研究機関の紀要が多いようです。さらに、このうち分野として人文・社会科学系のみを扱った資料は専門学校では13件、大学では38件となっていました。また別の特徴として、○○市博物館などの博物館が発行する、地域・郷土研究に関する研究紀要・研究報告も1割強ありました。ジャーナルでの分野分布と比較して研究報告書・技術報告書の人文・社会科学系の割合が多いのは、このような資料が登載されているためと考えられます。
これらのような紀要資料は各発行機関のWebサイトで公開している事例が多いと思いますが、J-STAGEで公開することでDOIを付与してコンテンツを流通させたり、J-STAGEと連携している外部サービスからも検索されやすくなるメリットがあります。

1999年に運営が開始されたJ-STAGEの当時を知る人は「STM(Science、Technology、Medicine)分野」「ジャーナル」のイメージが強いと思いますが、近年はこのような人文・社会科学系資料も公開されているので、さらに増加すると良いですね。
それではまた次回。

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