EMUG2024から見えた研究不正に対するトピック

Editorial Manager, 2024.06.25

こんにちは、瀬谷です。
6月12日から13日にかけて、弊社が日本総代理店を務めている投稿審査システム「Editorial Manager」(以下、EM)のユーザ会「EMUG2024」に参加してきました。世界中の出版社や学会などが集まるイベントで様々な議論がありましたが、その中でも今回トピックとして取りあげられていた研究不正に対する取り組みや考え方について速報版でお届けします!

研究のインテグリティについて

インテグリティ(Integrity)とは、直訳すると誠実さや真摯さという意味ですが、今回のユーザ会では、研究の透明性や信頼性、不正への対応について大きく議論されていました。

研究インテグリティを脅かすPaper Mills(ペーパーミル)

問題の一つに、Paper Mills(ペーパーミル)があげられています。Paper Millsとは不正ビジネスの一種で、大量の偽の論文を製造・販売する組織的な活動です。学術の倫理を侵害する許されない行為ですが、組織的に行われるため取り締まりが難しいのが現状です。
実際に、偽の論文が審査を通過し、掲載されるケースも少なくないようです。

不正に対応するために

このような研究不正に対して、様々なワーキンググループが立ち上がっています。ユーザ会ではその取り組みや考え方が紹介されていました。研究の信用度を上げることを目標にベストプラクティスの定義などに取り組んでいるようです。例えば、不正のカテゴリー化をすることや、不正について具体的な例をペルソナを使って考えること、実際に起きた不正から、そのような不正行為がEditorial Workflowの中でどのように起こりうるか、優先度を含めて検討が進められているようです。
このような研究不正に対する取り組みには学術業界だけでなく、政府関連やヘルスケア業界、銀行金融業界、旅行業界なども参入しているようです。
様々な分野から研究不正に対する懸念の声が上がっており、具体的な解決策が求められています。

STM Integrity Hub

そんな中で、STM(International Association of Scientific, Technical and Medical Publishers、国際STM出版社協会)の運営部門STM Solutionsは、二重投稿チェックや、ペーパーミルの検出ツールをリリースしました。ツールを総称して「STM Integrity Hub」と呼ばれています。現在、STM Integrity HubはEMとも連携のテストが進められており、投稿の段階でSTM Integrity Hubと自動連携してチェックができるように開発が進められています。
現時点での運用面での課題としては、以下のような内容が挙げられていました。

運用面での課題

  • 偽投稿の増加に対応する困難さ
  • 一貫したガイドラインの欠如
  • 人材確保や金銭面での問題

法的な課題

  • 一貫した契約の策定

    技術的な課題

  • データのアクセス制限を担保しつつ二重投稿を検知する仕組み

今後について

EMの開発元であるAries systems社もワーキンググループに参加しており、サービスプロバイダーとして協力が求められているようです。現時点では、EM側の機能としてはCrossrefと連携したSimilarity Check信頼スコアチェック機能が不正対応に役立っていますが、今後の連携機能にも期待しています。
全体としては、具体的な対応策やガイドラインの策定、そして研究画像不正に対する取り組みが必要となってくるようです。

おわり

他の参加者からは、不正に対応したいがその体制を作ることが難しいという声もありました。各機関へのアドバイスとして、研究不正を今すぐゼロにすることは難しいが、各ジャーナルまたは個人レベルで、不正に対する理解や対応方法を検討していくことが大事であるという意見もありました。また、Editorの先生方を不正に対する議論に巻き込み、一緒に考えてもらうことも一つの方法という話もありました。まずは出来るところから、にはなりますが、アトラスとしても今後の動きを追っていきたいと思います。