J-STAGEの満足度調査を分析してみた②

J-STAGE, 2021.08.31

こんにちは、再び登場たけぞーです。

先月公開しました「J-STAGEの満足度調査を分析してみた①」はご覧いただけましたでしょうか。今回は後半部分となりますので、まだ見ていない方はこちらをご覧いただいてから読んでいただくことをおすすめします。

後半は過去の満足度調査の結果も踏まえて、たけぞーなりの観点から見ていきます。

J-STAGEの役立ち度

前回も触れた「J-STAGEに公開することで、資料の情報発信に役立っているのか?」という問いですが、満足度調査でこの問いが出たのが2017年からとなります。2020年度まで毎年最初に聞かれる質問となっていますが、4回分どれをみても「役に立っている」「まあまあ役に立っている」の回答は98%を超える結果となりました。年々回答する機関が増えており、2017年では348件だった回答数が2020年では約1.5倍の519件となっていました。回答数が増えても、98%という高い役立ち度を保っているのですね。

これはJ-STAGEで記事を公開している発行機関向けの回答結果だったのですが、閲覧者向けでは「J-STAGEは役に立っていますか?」という質問が用意されていました。こちらの結果も見てみると約95%が「J-STAGEは役に立っている」と回答していました。閲覧者向けの質問には回答した理由も出ていましたが、過去4回変わらず「無料で利用できる」「学術情報として信頼できる」「公的機関のサービスであり信頼できる」という回答でした。

J-STAGEは2020年に3000誌を突破し、2021年8月20日時点で約500万記事が無料で公開されています。閲覧者もJ-STAGEを利用するメリットが充分あるということが分かります。

満足度調査は今後に活かされている

満足度調査は2014年以降の結果が公開されていますが、過去の設問や回答を見ていくとJ-STAGEのサービスに反映されていることが分かります。前回ご紹介した全文HTML公開については、2018年から満足度調査で毎年聞かれており、2020年に全文XML作成ツールがリリースされました。このように反映された例はこれだけではありません。

①評価版サイト

2016年の満足度調査には「評価版サイト」についての設問がありました。この評価版サイトは2017年11月25日の新インターフェース変更前に、試験運用として2016年5月に公開されたサイトです。もうすっかり今の画面に見慣れてしまいましたね。この変更後におこなわれた満足度調査では、リニューアル後の使用感や追加された機能についての設問がありました。

新インターフェース変更についてはJournal Caféのこちらでご紹介しました。また、新しい機能である編集委員会の紹介についても記事を公開しています。まだ見てないよという方はぜひこちらもご覧ください。

②Web登載サービスの利用と登載ファイル形式

PDFのみで記事作成ができるWeb登載サービスですが、2015年11月29日にリリースされた機能となります。それまではXML形式やBIB形式、SGML形式の登載でしたが、Web登載サービスのリリースによって、PDFデータのみで公開できるようになりました。

登載ファイル形式については2014年度から2017年度まで毎年聞かれていましたが、2018年度からは聞かれなくなった設問となります。これはおそらく、2019年3月23日に旧BIB形式とSGML形式のアップロードが廃止されたからでしょう。旧BIB形式は2014年3月末でサポートは終了となりましたが、アップロード自体は可能でした。Web登載サービスの導入やXMLの推進などの理由から、データ形式についてはJSTが把握しておきたかった情報なのではないでしょうか。2014年度の結果では、回答した34%が旧形式を利用していましたが、2017年度は8%まで減少しました。この結果を元に、2019年3月に廃止を決定したのかもしれませんね。

③研究データ

2018年度からは研究データの取り扱いについての問いがあり、今回の満足度調査まで毎年用意された設問となります。この設問については2021年3月に本運用が開始されたJ-STAGE Dataが影響しているでしょう。

J-STAGE Dataは、J-STAGEに登載されている記事の関連データを公開するプラットフォームです。J-STAGE Dataに登載された記事関連データには記事とは異なるDOIが付与され、すべてオープンアクセスで公開されます。2021年8月20日時点で9誌利用しており、182アイテムが公開されていました。そういえば2020年度のJ-STAGEセミナーも研究データがテーマとなっていましたね。

④プレプリントサーバ

これまではすでに実施・リリースされたことについて注目しましたが、最後は機能としてはまだリリースされていないプレプリントサーバについてです。2018年からプレプリントサーバについての設問が追加されました。投稿承認状況のみだったプレプリントについての設問は、今回の満足度調査では6問も用意されています。

J-STAGE中長期戦略の取り組むべき事項においても、「プレプリントの専用サーバの設置や早期公開の多段階実施について検討すること」が記載されています。早期公開の多段階実施については、2020年9月に版管理機能がリリースされましたのでこれが当てはまるのではないかと思います。プレプリントサーバのリリースも近いのではないでしょうか。

今回調べたものについては、時系列ごとに図にまとめましたのでご覧ください。

おわりに

今回はJ-STAGEで公開されている満足度調査について、2回に分けてたけぞーなりの観点で見ていきました。毎年なんとなく結果を覗いていましたが、改めて見てみると満足度調査結果は今後のJ-STAGEに活かされていることが分かりました。

Journal Caféではさまざまな方に楽しめる・お役に立てるような学術関連のコラムを定期的にお届けしています。J-STAGEに関する記事も公開しておりますので、ぜひ他の記事もご覧ください。