J-STAGEの満足度調査を分析してみた①
J-STAGE, 2021.07.29みなさま初めまして!三代目Journal Café店長、たけぞーと申します。
梅雨で洗濯物が干せない日々が続いてると思ったら、一気に梅雨明けしてしまいとても暑い日が続いていますね。自粛の日々が続きますが、家の中でも熱中症になりますので、水分補給や体調管理には十分ご注意ください。
さて、2020年度J-STAGE満足度調査が4月に公開されていたので、たけぞーなりの観点から2回に分けて見ていきたいと思います。
満足度調査とは
J-STAGEでは毎年、J-STAGEで資料を公開している発行機関向けとJ-STAGEの閲覧者向けに満足度調査を実施しています。この調査はJSTが提供する主要な情報サービスの利用状況、認知度、利用シーンや類似サービスとの比較・選択状況を明らかにし、今後に活かしていくために実施しているようです。
満足度調査の結果は2014年度から2020年度まで公開されており、利用機関の増加とともに年々回答数も増加しています。過去の調査結果はこちらのページから見ることができます。
今回は発行機関向けの調査結果をメインに、気になったところをピックアップして見ていきます。
情報発信への役立ち度
「J-STAGEに公開することで、資料の情報発信に役立っているのか?」という問いです。これについては、「役に立っている」「まあまあ役に立っている」がなんと99.2%と、回答したほとんどの発行機関が情報発信の役に立っているとのことでした。
出典:「令和2年度 JST情報サービス利用者の満足度調査(J-STAGE機関向け) J-STAGE 情報発信への役立ち度」
理由について見てみると、「電子データを公開できる」「DOIを論文に付けられる」「J-STAGEに公開して閲覧数や引用数が増加した」という回答が多く、J-STAGEのメリットを十分に受けているようです。J-STAGEは一部のオプションを除いて無料で利用することができます。Web登載サービスを使えば、PDFのみで記事を公開することもできますし、記事を公開すれば永続的な識別子であるDOIを付与できます。また毎月アクセス統計レポートもダウンロードできますので、どの記事がどれくらい読まれているのかを確認できますね。また過去のセミナー資料によると、国内・海外合わせて年間約3.7億ダウンロードだったようですから、J-STAGEに公開することで閲覧される機会が増えると言えます。
コロナ禍以降、 J-STAGE利用頻度の変化
この設問は昨年度特有のものですね。昨年から今日に至るまで新型コロナウイルスの影響は、仕事上や生活上さまざまなところに出ています。学術大会が中止になったり、学会誌も通常通りに発行できないなど、資料の発行においても影響が出ているところもありますが、 J-STAGEの利用頻度については発行機関向け、閲覧者向けどちらも「変化なし」という回答が一番多かったです。ただ、閲覧者向けの回答では「利用頻度が増えた」、「新規に使い始めた」という回答も10%ほど見られますし、先ほどのダウンロード数からも電子ジャーナルを閲覧する人が増えたと見てよいでしょう。
発行機関向け 回答結果
出典:「令和2年度 JST情報サービス利用者の満足度調査(J-STAGE機関向け) コロナ禍以降、 J-STAGE利用頻度の変化」
閲覧者向け 回答結果
出典:「令和2年度 JST情報サービス利用者の満足度調査(J-STAGE閲覧者向け) コロナ禍以降、 J-STAGE利用頻度の変化」
また、発行機関向けでは「投稿数が増えた」と「投稿数が減った」が同じくらいありました。その資料の状況にもよりますが、おそらく新型コロナウイルスの影響で早期公開など医学系の投稿は増えたのではないかと考えられます。
全文HTML公開の利用状況
全文HTMLでの公開についてもいくつか問いがありました。まず利用状況については利用中が17.3%、検討中が19.3%と、まだまだ全文HTML公開への移行は考えていない発行機関が多いようです。移行しない理由にも、PDF形式での公開で十分という結果が一番多かったです。
出典:「令和2年度 JST情報サービス利用者の満足度調査(J-STAGE機関向け) 全文XML 利用状況・移行予定」
ちなみに、2018年に「全文HTML公開をしている資料が、J-STAGEにどれくらいあるのか」というのを調査したことがあります。公開画面に表示されている「全文HTML」アイコンをもとに、1つ1つ確認するという地味な確認をしていたのですが、当時2,720誌中、73誌と約2%程度しかありませんでした。また全文XML作成ツールがリリースされた1か月後くらいにも同じように調査をしてみましたが、111誌という状況です。公開資料は増えるものの、全文HTML公開はまだまだ進んでいないことが分かります。
この設問が設定されているのは、やはり2020年9月に「全文XML作成ツール」がリリースされたからでしょう。また全文HTML公開は閲覧性の向上やコンテンツの流通拡大に繋がると考えられることから、JSTとして推奨している影響もあります。この「全文XML作成ツール」は従来から提供されていた「書誌XML作成ツール」とは異なり、編集登載システム内から使用することができるようです。
また「書誌XML作成ツール」はPDFファイルを使用しますが、「全文XML作成ツール」はWordもしくはLaTeX形式の原稿ファイルをアップロードし、J-STAGEに登載できる全文XMLファイルを作成・編集できるツールです。全文XMLへの移行に関する設問は2016年から、また利用状況については2018年のアンケートから聞かれるようになりましたが、2020年になりJ-STAGE用データを作成する全文XMLツールがリリースされたことで、全文HTML公開が推進できるのではないかと思います。
今回はここまでにしたいと思います。次回は過去の満足度調査結果に触れながら、見ていきますのでお楽しみに~