ジャーナル小話④ ここが大変!編集事務局①

Editorial Manager, 2019.12.11

みなさん。令和元年もあと20日ですね。

そして、大河ドラマ「いだてん」が今週15日(日曜)についに最終回です。来年の東京オリンピック2020を迎えるあたって、オリンピックにかけた人々の思いやその歴史的背景を1年間かけてしっかり描いたNHKにしかできない傑作ドラマです。
見逃してしまったと言う皆さん!きっと総集編を放送すると思いますので、ぜひ見てもらいたいと切に思っているジェイミーです。

今年のジャーナル小話では学会事務局業務の話をしてきましたが、今回は学会誌の発行に関わる編集事務局業務を担当することになった先生方から聞いた体験談を数回にわけてご紹介したいと思います。

 

なぜ学会誌を発行するの?

学会誌を発行する多くの学協会は、学術団体として日本の科学者の内外に対する代表機関で、内閣府の「特別の機関」である日本学術会議から「協力学術研究団体」の指定を受けています。

この「協力学術研究団体」に指定されるにはいくつかの要件があり、その中の1つに「発行する「機関誌」については、継続して年1回以上発行していること、学術の研究発表及び議論を主たる目的とする、主に査読付きの投稿論文等を掲載した論文誌であることが必要です。このため、大会報告、予稿集、講演要旨集、解説や報告が主となったものは対象となりません。」という説明があります。

出典:日本学術会議「協力学術研究団体の要件について

特に「大会報告、予稿集、講演要旨集、解説や報告が主となったものは対象となりません。」と言うことは、これらの刊行物を出していても機関誌としては認められないので、学協会は研究者から投稿してもらった論文を査読や審査判定して「機関誌」発行の体制を準備する必要があります。

多くの学協会では、所属する研究者や先生から選ばれた編集委員長と編集委員で組織される編集委員会をもっています。
編集委員会を運営するための編集事務局(以下「事務局」)は、編集委員会の先生方が担当することも多く、2年から3年の任期で持ち回りするケースがほとんどですが、新しく事務局の担当に選ばれた先生方は業務の引継ぎ期間もそこそこに前任者から渡された資料を見ながら運営していくことなります。

 

事務局になった先生方は、それまで投稿者や編集委員や査読者として関わったことはあっても、あくまで依頼されたことをやることが中心でしたが、反対に依頼する側になるわけです。

投稿された論文の受付作業や編集委員や査読者への審査依頼や督促、投稿者からの問い合わせに論文の進捗管理、編集委員会の開催などなど・・。
引継ぎ資料があるとは言え、初めての慣れない作業ばかりが待ち受けているということですね。

ちなみに事務局をはじめとする学協会の組織運営に関わる研究者や先生のお仕事は基本的にボランティアがベースとなっているため、それぞれ本業(研究や授業やゼミなど)の仕事が終わってから運営の作業をすることがほとんどです。

※研究者や先生方の忙しさは、文部科学省による研究者活動の実態調査についてのコラムをご覧ください。

今回、お話を伺った先生方は、年間投稿数が40~50投稿ある学会誌の事務局を担当されており、論文の投稿はメールや郵送で受付、各論文の進捗管理はエクセルを利用していました。

 

前置きがだいぶ長くなりましたが、それではさっそく「ここが大変!」と思ったポイントその1はこちら。

ここが大変!編集事務局① 論文投稿の受付作業

投稿者が論文を投稿するときは、投稿規定に従って論文を書いて必要な提出書類を用意してメールや郵送で送ります。
そして事務局に投稿が届くわけですが、中身を確認してみるとこんな投稿があるそうです。

「論文の体裁が投稿規定に合っていない・・」

「必要な書類が足りていない・・・・・・・・」

「書類の記載内容に不備がある・・・・・・・・」

メールや郵送による投稿を受付ているため、投稿者は「まずは送ってしまえば投稿できる」心理的なハードルが低いこともあって、ほとんどの投稿には何かしらの不備があるそうです。
メールの場合、添付ファイルの中身を1つ1つ確認して不備があれば指摘事項をまとめてメールで返信しますが、郵送の場合は投稿者へ郵送するのでこれが意外に手間がかかるそうです。

事務局編でも出てきた発送問題あるあるですね。

また、不備の指摘事項をまとめるだけでもけっこう時間がかかってしまうため、これを1日1投稿終えるだけでも時間があっという間に過ぎてしまうこともしばしばとか。。。

さらに、論文は採択になるまで査読者などから内容について直しの指摘が平均2~3回程度あり、投稿者は修正した論文を投稿するときに最初の投稿とは別の提出書類が必要になります。
この修正投稿の受付作業でも不備がないか1つ1つ確認するので、不備があればまた投稿者への返却作業をすることになります。

特に新規の投稿は初めて論文を書いたと思われる投稿者もいるため、事務局の先生方もそのような投稿者へ論文の書き方を教育する意味で不備があった時もしっかりサポートしたい気持ちを持っています。しかし、一方でそれだけに時間をかけるわけにもいかず

「論文の投稿があることはうれしいことなのに、編集事務局を始めたら新規の投稿があるとだんだん中身を見るのがイヤになってしまいそうで困っちゃうなー」

と笑って話をされていましたが、限られた時間の中で人を育てたいと思う気持ちとそこにかける時間のバランスの大変さを感じました。

 

次回は受付作業のあとにある「大変なこと」をご紹介します。

令和2年はいよいよ皆さんお待ちかねの東京オリンピック2020です。どんなこと起きるのか楽しみですね。

「Atlas Journal Café」も令和元年以上に学術に関わる方だけでなく、たまたま訪れてくれた方にも楽しめる・お役に立てるような学術関連のコラムをお届けしていきます。

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