ゆるりとしたORCIDの連載 その⑧ AXIES年次大会「ORCIDの活用と展開」に参加しました

ORCID, 2019.12.16

高橋です。

大学ICT推進協議会(AXIES)の2019年度年次大会(2019年12月12日〜14日:福岡)において開かれた「ORCIDの活用と展開」というセッションに参加してきました。
日本におけるORCIDコンソーシアムの進捗状況や、既にORCIDメンバーである大学からの事例紹介など充実した内容でした。

発表内容を簡単にまとめていきたいと思います。

全体状況:森 雅生 先生(東京工業大学)

本セッションのオーガナイザーである森先生から、2020年1月からAXIESがリード機関となり、日本のORCIDコンソーシアムが発足される旨の報告がありました。2020年1月〜3月に参加機関の募集期間があり、4月から本格始動とのことです。
また、総合科学技術・イノベーション会議の前議員である原山優子先生が、2020年からORCIDの理事に就任されるとのことです。ORCID内における日本のプレゼンス向上が期待されますね。


※補足(日本のORCIDコンソーシアムについて)

ORCIDは個人の利用は無料ですが、機関メンバーは有料となります。機関メンバーになるとORCIDへの情報の書き込みや、登録情報のエクスポート、各機関へのレポート提供といったことが可能となります。
各機関が個々にメンバーになることもできますが、まとまると年会費がお得になるコンソーシアムという制度をORCIDは設けています。
既にORCIDメンバーである大学や研究機関が中心となり、日本でもコンソーシアムを立ち上げて参加機関を増やしていくことを目指した活動がORCID Japan Consortium for Research Institutionsです。


事例紹介:青木 学聡 先生(京都大学)

続いて事例紹介が2つありました。まずは京都大学の事例です。
京都大学ではORCIDの登録者がキレイな右肩上がりで増えているそうです。研究者がORCIDを持つのはデファクトスタンダードとなったので、次のステップは「どう使うか?」、また機関が「どう使いたいか?」のフェーズに入ってきたとのお話がありました。

機関が「どう使いたいか?」の部分ですが、「ORCID→機関」よりも「機関→ORCID」からスタートするとやりやすいとのことでした。
早くから機関メンバーとしてORCIDの活用に取り組まれている京都大学様の事例は他の大学や研究機関も参考になると思います。

事例紹介:矢吹 命大 先生(横浜国立大学)

続いて横浜国立大学の事例です。
矢吹先生からはURAの立場として発表がありました。URAの大きなミッションとして研究費の獲得がありますが、その前の研究力の調査分析(いわゆる研究IR)のための基盤となる人の同定(IDの収集や名寄せ)の部分に大きなコストがかかっており、そこにORCIDを活用する構想について報告がありました。
Crossrefのauto-update機能により、学内の先生に「どこに出しました?」といった具合に業績を聞きまわるような、研究者にも研究IRにとっても負担となっていることへの解消や、大学の紀要を取り込むことで、人文社会系にも恩恵が広がり、その結果として研究IRの充実に繋がるといった興味深いお話もありました。

コンソーシアムの準備状況:森先生

最後に森先生より、まずは、20機関の参加を目指して1月にコンソーシアムを発足する準備を進めている旨の報告がありました。
また、東工大でも、教育の成果、研究の成果、研究費の獲得、といった情報の収集にかなりのエフォートを割いておりORCIDは重要なインフラとなるというお話に加え、博士学生の追跡や招聘した教員のその後の活動など、ORCIDの活用の広がりへの期待についてのお話がありました。
その他に、IRにおいて職員番号をKeyにするとかなり個人情報に近いのだが、ORCIDは公開されているIDなので、情報保護の観点でも良いのではないか?といった今までとは少し違う視点からのご意見もありました。


いよいよ1月からコンソーシアムが発足することもあり、大変興味深いセッションでした。コンソーシアムが始動すると各大学の事例も増えていくと思うので、大変楽しみです。
セッションの途中で、メンバー機関向けのORCID活用サービスとして、弊社のSociety to ORCIDをご紹介いただきました。
メンバー機関になった後に「簡単に」、「目に見える形で」成果を出すことができるツールです。ご紹介いただき、ありがとうございました。

終了後はウキウキしながら何年かぶりに元祖長浜屋に行ってきました。替え玉はカタにしました。