J-STAGE推奨基準が改定されました②編集基準編

J-STAGE, 2020.10.20

こんにちは、いづいです。テレワークにともない可動式スタンディングデスクを買いました。が、その後ワーキングチェアを買ったら座っりっぱなしの日々です。

前回、2020年5月に公開されたJ-STAGE推奨基準の登載・公開基準をご紹介しました。今回は公開するにあたっての編集ルールが定められた編集基準について、主な改定内容をご紹介します。

オープンアクセス

J-STAGEでは発行機関がオープンアクセスの実現に積極的に取り組むことを推奨していますが、その前提であるJ-STAGEにおけるオープンアクセスの解釈が推奨基準で明記されました。

BOAI(Budapest Open Access Initiative)の定義によれば、「オープンアクセス」(OA)には記事を無料で閲覧できることに加えて自由な再利用ができることも要件としている。
J-STAGEでは本解釈に基づき、認証期間とエンバーゴ期間を設けず、かつCCライセンス表示がなされているものをOA誌と判断する。単なるフリ-アクセス(記事を無料で閲覧できる)のみではOAにはあたらない。この場合は、「フリー」を表示すべきである。

エンバーゴや記事認証はなしとすること、フリーアクセスはオープンアクセスではないのでCCラインセスを表示すること、と記載されています。
また、そのオープンアクセスへの取り組みの結果として、DOAJへの登録が推奨されています。J-STAGEではこの数年、ジャーナルコンサルティング事業としてJ-STAGE登載誌の品質向上を支援しており、その事業の中でもDOAJへの登録支援も実施しているようです。

大原則としてこのような前提に加えて、発行機関のやむを得ない事情によって、冊子体発行から公開までのエンバーゴや、購読者・購読機関だけが読める認証を設けることが考慮されています。これはあわせて「最大24か月以内」とするよう期間が明記されました。この「24カ月以内」については今回の改定で編集基準内でも2か所、登載・公開基準でも1か所明確に記載されており、強調しているものと考えられます。

CCライセンス

上記のオープンアクセス推奨の流れで、CCライセンス表示に関する推奨基準が追加されました。各記事に付与するための権利処理や、また、J-STAGEの画面だけでなく記事のPDFについてもCCライセンスマークを表示することが触れられています。

プライバシー保護

症例報告の顔写真や個人が特定できる情報などの取り扱いはセンシティブですが、ここでは過去に冊子体で発行された際にはそのまま掲載されていたものについて、それを電子公開する際に、墨塗り・差し替え・削除することが推奨されています。社会情勢を反映したものですね。

各種ID

ISSNの付与単位、DOIの冊子体への記載、ORCIDやe-Radなどの登録、のような電子ジャーナルにまつわる永続的識別子に関する扱いが新たに記載されました。

その他

その他、個々には触れませんが、

  • 記事データの訂正・修正等
  • 発行機関名、著者名の表記
  • 引用文献の書き方

などが追記された内容です。

おわりに

2回にわたり推奨基準改定についてざっくりと見てきました。今回の改定は電子ジャーナルの新しい用語を取り込んだ内容くらいに思っていたのですが、コラムでの紹介にあたって見直してみると、全体的に「J-STAGE 登載ジャーナルのためのオープンアクセスガイド」の内容が推奨基準にも反映され、J-STAGEが電子ジャーナルプラットフォームとして、単なるフリーアクセスのジャーナルではなく、信頼されるオープンアクセスジャーナルを増やしていく、という大きな目的の元で改定されたことを読み取ることができました。
また、この改定でこの推奨基準自体にDOIが付与され、CC BYで公開されたのもひとつの特徴で、まさにそれ自体がオープンアクセスを意識した取り組み姿勢の表れ、と感じました。

それではまた次回のコラムまで。

J-STAGE推奨基準が改定されました①登載・公開基準編