DOIを付けるためには

JaLC, 2020.03.10

はじめに

最近、お客様から「DOIを付けたいんですが」と相談され、冷や汗ダラダラで目がキョロキョロしてウロウロ行ったり来たりしている人を街なかでも見かけることが多くなった夢をみたキョロ助くんです。ハッと目覚め一歩進んだ価値の高いシステムとサービスを提供できるようにDOIについて調べてみました。せっかくなので皆様の参考になれば嬉しい所存です。

DOIを付けて運用するための手順を超簡単に書くと下記になります。

  • DOI登録機関(RA: Registration Agencies)のメンバーとなる
  • DOIとURLとコンテンツのメタデータを登録する
  • DOIの維持管理をする
  • 費用を支払う

DOI登録機関(RA)のメンバーになる前にRAを選ぶ必要がありますね。どうやって選んだら良いのでしょうか。

コンテンツによってスタンダードなRAがある

  • 学術コンテンツであればCrossref
  • 研究データであればDataCite

さらに、日本国内の機関が保有する学術コンテンツや研究データであればJaLCがあります。ここでポイントなのは、JaLCのメンバーになれば、CrossrefのDOIやDataCiteのDOIも付与できることです。JaLCにデータを登録さえすれば、自動的にCrossrefまたはDataCiteにメタデータが連携されます。つまり、JaLCはRAでもありCrossrefやDataCiteのメンバーでもあります。これからDOIを付けたい機関の方は、直接CrossrefやDataCiteのメンバーになることもできますが、日本語のサポートが受けられるJaLCのメンバーになることは大きなメリットになるのではないでしょうか。

出典:ジャパンリンクセンター概要 p.13

そもそもどこのDOIを付けるのがいいのか

JaLCのメンバーになれば、CrossrefやDataCiteのDOIも付与できると説明しました。JaLCのDOIとCrossrefやDataCiteのDOIの違いは何でしょうか。メタデータをどこに預けるかと考えれば良いと思います。JaLCのDOIであれば、メタデータはJaLC内で活用されます。JaLCを通じてCrossreのDOIを付与する場合は、JaLC内に登録したメタデータから、Crossrefに必要な形式でメタデータ登録されます。DataCiteも同様です。下記の表は、RAとしてのCrossref、DataCite、JaLCの簡単な比較表です。各RAはそれぞれの目的があり一概に比較できませんが、参考にしてください。

 

項目 Crossref DataCite JaLC
RAの概要 学術コンテンツに特化した国際的なコンテンツ型のRA 研究データに特化した国際的なコンテンツ型のRA 日本国内で公開された学術論文、書籍、特許情報、研究データ等にDOIを付与する地域型のRA
登録可能なDOI CrossrefのDOI DataCiteのDOI JaLC、Crossref、DataCiteのDOI
登録コンテンツ数 1億超え 21,303,970
(2020/2/7現在)
8,425,947
(2019年12月末時点)
メンバー向けサービス ・Content Registration
・Reference Linking
・Cited-by
・Similarity check
・Crossmark
・Metadata Delivery
・Funder Registry
・Assign DOIs
・Find data
・Event data
・Profiles
・re3data
・Citation formatter
・Statistics
・Service status
・Content negotiation
・OAI-PMH
・Test environment
・コンテンツ登録
・引用文献検索
・メタデータサーチ
サポートしているコンテンツタイプ Metadata deposit schema
Journals and journal articles
Books, chapters, and reference works
Conference proceedings
Reports/working papers
Standards
Datasets
Dissertations
Preprints
Grants
Peer reviews
Components
15のresourceTypeGeneral
Audiovisual
Collection
DataPaper
Dataset
Event
Image
InteractiveResource
Model
PhysicalObject
Service
Software
Sound
Text
Workflow
Other
JaLC技術情報
ジャーナル、ジャーナルアーティクル
研究データ
書籍
e-larning
汎用データ
利用料 Crossref fees DataCite Price List 会員区分に応じた年会費
主要なイベント Crossref Live member meetings JaLCメンバーミーティング
対話・共創の場

ご存知のとおり、Crossrefに登録されているコンテンツ数が多いです。どのRAを選択したとしても最低限のメタデータを登録しDOIを有効にすることができますが、コンテンツのビジビリティーを上げるためにも、各RAで提供しているサービスに有効的に利用されるためにも、可能な限り多くのくメタデータを登録することがメリットとなります。

JaLCでDOIを付ける

さて、JaLCのメンバーになればCrossrefやDataCiteのDOIを付けることができると説明しました。実際にJaLCでDOIを付ける場合のことを説明します。JaLCを利用する際に下記のとおりいくつか確認したいものがありますので順に説明します。

  • JaLCのコンテンツタイプ
  • ランディング先のWebサイト
  • DOIの種類の選択
  • コンテンツ登録方法
  • JaLCの会員区分

JaLCのコンテンツタイプと選択可能なDOIの種類

JaLCでは5つのコンテンツタイプがあります。それぞれに選択可能なDOIの種類は以下の通りです。(JaLCでの審査で採択される必要があります)

コンテンツタイプ 選択可能なDOIの種類
ジャーナル論文 JaLC、Crossref
書籍・報告書 JaLC、Crossref
研究データ JaLC、DataCite
e-larning JaLC
汎用データ JaLC

ランディング先のWebサイトとDOIの粒度

ご自身の機関のWebサイト上にコンテンツを公開されているか、これから公開サイトを構築するかなど事前に確認しましょう。DOIを何単位に採番するかといった粒度も検討します。一般的には一つのDOIにランディング先URLひとつがわかりやすいと思いますが、既に公開サイトがある場合、一対にできないケースもあるかと思います。また、研究データではコンテンツ自体の更新頻度が高くランディング先の情報が日々更改されるなど様々なパターンがありますので、DOIを付ける単位を検討する必要があります。DOIの粒度はある程度自由度があるため、機関としてDOIを利用されやすい単位で付与することや、DOIの維持管理がしやすい単位とすることをお勧めします。

コンテンツの登録方法

JaLCへコンテンツを登録する方法は下記の3種類あります。それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。XMLでの登録が一般的です。

方法 メリット デメリット
JaLCのWebで登録 画面から入力できれば誰でも登録可能 大量のコンテンツ登録には向かない
XMLでの登録 決められたフォーマットでXMLファイルを作成し、アップロードしコンテンツを一括に登録可能 XMLの作成の敷居が高い
APIでの登録 プログラミングし登録を自動化することや、自機関のシステムと連携しやすい APIを利用可能なスキルを持った人員が必要となり他の方法よりも難易度が高い

JaLCの会員区分

JaLCメンバーの区分には正会員と準会員があります。過去のコラムで解説しているので参考にしてください。正会員を選択する際は、DOI永続性担保義務が生じます。DOIは各メンバーが正しいメタデータを登録し、DOIを永続的に管理することで成り立つ仕組みですので、維持管理が難しい場合は、準会員になることをお勧めします。まだ公開サイトを持っていない場合、JaLCの事務局を担うJSTが運営している科学技術情報発信・流通総合システム J-STAGEでの公開も検討したほうが良いです。J-STAGEの利用に際しても審査がありますが、J-STAGEはJaLCの正会員ですので、J-STAGEに採択されると自動的にJaLCの準会員になります。J-STAGEの利用は無料ですので、無料でDOIを有効化することができます。DOIの登録もDOIの維持管理もJ-STAGEが実施します。ただし、2020年3月現在、J-STAGEでは新規の資料は原則的にCrossrefのDOIは選択できず、JaLCのDOIのみ選択可能となっているようですので、CrossrefのDOIを選択したい場合はJaLCの正会員になるか、他の正会員の準会員となるかのどちらかになります。

おわりに

個人的にはこれからDOIを付ける場合、J-STAGEに登載可能なコンテツであれば、J-STAGEを活用するのがベターだと思います。既に独自サイトをお持ちであればJaLCの準会員になることから検討し、自機関でXMLの知識やDOIの維持管理が可能であればJaLCの正会員といった順で検討されると良いかと思います。これでキョロ助卒業ナリ!