CHORUS(コーラス)について調べてみた
その他, 2023.04.07お久しぶりです。パクです!
2023年になったばかりの気がしますが、いつの間にか桜の季節になりました。時間が過ぎるのが早すぎますね。(歳を取ったせいかもしれません涙)
さて、年度切り替えの時期となり、あらためてJaLCの「令和 4 年度ジャパンリンクセンター運営計画」を読みましたが、「CHORUS との連携について引き続き検討を進める。」との記載があることに気づきました。考えてみると、CHORUSについて何となくわかりますが、詳しくは知らなかったのでこの機会にちょっと調べてみました。ということで、今回はCHORUSについて調べた内容を共有します。
CHORUSとは
皆さんはCHORUSについて知っていますか?合唱のコーラスではありません!ここでいうCHORUSは、独立非営利団体である「CHOR, Inc.」によって運営されているサービスのことです。
公式サイトには下記のように紹介されています。
CHORUSは、資金提供機関(Funder)、学術機関(Institution)、出版社(Publisher)、学会(Society)、研究者(Researcher)、一般利用者(Public)が、資金提供された研究の成果物の状況を見たり、見つけたり、理解したりすることを支援します。
CHORUSは、資金提供された論文やデータ報告書の情報へのアクセスを容易にします。資金提供機関や学術機関のメタデータ(論文やデータレポート)を収集し、その情報を信頼できるまた、信頼される方法で視覚化して提供することで実現しています。
要するに、資金提供された研究成果物の情報を提供するサービスであり、誰でも自由に利用できる(オープン)ということです。また、CHORUSのOPEN RESEARCH PRINCIPLESに公開されている内容から、CHORUSがオープンサイエンスを支援していることもわかります。
それでは各ステークホルダーには具体的にどのようなメリットがあるのでしょう?これについてCHORUSに各ステークホルダーに対してどのようなメリットがあるか書いてあります。被るところもありますが、要するに下記のメリットがあることがわかります。
資金提供機関 | 学術機関 | 出版社 | 研究者 | 一般利用者 | |
---|---|---|---|---|---|
資金提供された研究成果物(論文やデータ)が確認できる。 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
既存の公開プロセスで発生する標準的なメタデータを利用するため新たなワークフローを作成する必要がない。 | ○ | ○ | ○ | ||
研究者がコンプライアンスやオープンアクセスに関する義務を遵守するよう支援する。 | ○ | ○ | ○ | ||
オープンアクセスへの支持を証明できる。 | ○ |
それではCHORUSはどこからデータを収集しているのでしょう?また、本当に上記のようなメリットがあるのでしょうか?
メタデータ収集と提供サービス
メタデータ収集
CHORUSはCrossref、DataCite、ORCIDのようなPID(永続的識別子)登録機関を含め、約50のCHORUSメンバー(出版社、資金提供機関、学術機関など)からメタデータを収集しています。その中にはElsevierやWiley、Springer Natureのように世界的に有名な出版社も多数あります。
提供サービス
現在CHORUSが提供するサービスには「Dashboard Service」と「Search Service」があります。また、CHORUSはCrossrefのOpen Funder Registryをもとにしてサービスを提供していますので、サービスの対象になるためにはCrossrefのDOIかつ、DOIのメタデータにOpen Funder Registry(Funder ID)を登録する必要があります。
Dashboard Service
Dashboard Service(ダッシュボードサービス)について、公式サイトには「ダッシュボードサービスにより、資金提供機関、学術機関、研究者、出版社、および公衆は、出版社メンバーのオープンアクセス遵守状況を把握することができます。」と紹介されています。うん、説明だけだとよく理解できないので、実際にJSTのダッシュボードを見てみましょう。
①Summaryページ(サマリーページ)
ダッシュボードにはいくつかのページがあり、下記の図1はサマリーページとなります。
[図1.JSTのサマリーページのToday’s IndicatorsとHistory]
上記の図1を見ると、左側に本日の指標(Today’s Indicators)としていくつかの指標の統計データがあり、右側に各指標の研究記事数の履歴をグラフ(History)で表示しています。
各指標の詳細は以下にまとめました。
(各指標の「?」マークにマウスカーソルをホバーすると指標の説明が表示されます。)
指標名 | 内容 |
---|---|
Publications to date, where | Crossrefのメタデータでfunder idによって特定された研究記事数 |
Verified open access on Publishers Site | 出版社のサイトでオープンアクセスとして確認されたコンテンツの割合 |
Reuse terms available | Crossrefのメタデータに再利用許諾条件が記載されているコンテンツの割合 |
Archived | CLOCKSSまたはPorticoに保存するために収集された、CHORUSの出版社メンバーのコンテンツの割合 |
Datasets | Scholix DLIサービスによって示されたデータセットを1つ以上持つコンテンツの割合 |
ORCID IDs | ORCIDに登録されたORCID IDを1つ以上持つコンテンツの割合 |
Agency Portal URLs | エージェンシーパートナーポータルに掲載されていることが判明されたコンテンツの割合 |
また、その下には図2のように各指標の明細(Breakdown)があり、各指標の研究記事数をYes(指標に該当する)とUnknown(不明)で表示します。
[図2.JSTのサマリーページのBreakdown]
例えば、図1と図2を見ると下記のことがわかります。
① Crossrefに登録されている研究記事の中で、JSTをfunder idに指定した研究記事数(Publications to date, where):36,817
② ①の中で、出版社のサイトでオープンアクセスとして確認された研究記事の割合(Verified open access on Publishers Site)
- オープンアクセスとして確認された研究記事数(Yes):54.46%(20,052)
- オープンアクセスとして確認されてない研究記事数(Unknown):45.54%(16,765)
図1の履歴グラフ(history)をみると、オープンアクセス数が徐々に増えてはいますが、オープンアクセスとして確認された研究記事数が54.46%で、まだ半分くらいということが気になります。といっても、45.54%はあくまで不明(Unknown)ですので、実際はもっとあるかもしれません。
また、サマリーページの下には図3のようにJSTから資金提供を受けた研究記事の公開数を出版社別に表示しています。出版社は全部で123企業ありますが、その中でElsevierの研究記事数が11,216で一番多いです。
[図3.JSTのサマリーページのPublishers]
②Dataページ(詳細ページ)
次はダッシュボードの詳細ページとなります。詳細ページではサマリーページで数値で表示した研究記事の詳細が確認できます。まず、下記の図4は詳細ページのIndicator History(指標履歴)となります。サマリーページは各指標に対して本日確認した数値を表示しますが、Indicator Historyは日付ごとに確認した各指標の数値の履歴を表示しますので各指標の過去のデータも確認できます。
[図4.JSTの詳細ページのIndicator History]
また、各指標の数値をクリックすると、図5のように指標に該当する研究記事のリストが表示されます。図5は、図4で4月1日の「出版社のサイトでオープンアクセスとして確認された研究記事数(Verified open access on Publishers Site > Yes > 20052)」をクリックした後の画面です。ここではDOIを含め資金提供機関情報(Funders、Funder ID)やORCID ID、コンテンツバージョン(License Type)、データセットなど、各研究記事の各種メタデータが確認できます。
[図5.オープンアクセスとして確認されたコンテンツのリスト]
確かに、このページではDOIで研究記事にアクセスすることも、ORCID IDで研究者情報を確認することも、またコンテンツバージョンを確認することもできますのでとても便利ですね。特に資金提供機関の場合、「Verified Open Access on Publishers Site」の「Unknown」のリストを表示すると、オープンアクセスに分類されていない研究記事の情報が簡単に確認できます。
そのほかここではご紹介しませんが、出版社別の研究記事数のページやレポート機能などもありますので、ぜひご自身で試してみてください。
Search Service
次にSearch Serviceという検索サービスがあります。このサービスではCHORUSの出版社メンバーが提供する、資金提供された研究記事が検索できます。
(現時点ではまだBETA版のようです)
[図6.検索サービス]
検索項目にはFunderとDOIがあり、「Open Access Only」にチェックするとオープンアクセスのみ検索することも可能です。実際、FunderでJSTを指定して検索した結果、図6のようにJSTから助成を受けた研究記事が表示されました。検索結果には資金提供機関の情報を含め、各種書誌情報が表示されます。また、DOIも表示しますので、研究記事にアクセスすることも可能です。これはありがたい!
[図7.検索結果画面]
おわりに
今回はCHORUSについて調べてみましたが、いかがでしたか?CHORUSについてはあまり詳しくなかったので、とても勉強になりました。確かに、世界的に資金提供機関による助成を受けた研究成果についてオープンアクセスにすることが義務付けられるようになりましたが、資金提供機関としては本当に守られているか気になるはずです。そう考えると、CHORUSはステークホルダーの中でも資金提供機関が一番喜ぶサービスだと思います。
2023年3月の時点で、CHORUSはCrossrefのDOIとfunder idをもとにサービスを提供していますが、JaLCのDOIも連携対象となれば日本国内の資金提供機関にとっても便利に使えると思いますので早く連携できればうれしいですね!
それでは皆さん、良いCHORUSライフを!