PubMedの論文データの修正はどうしたらいいの?

PubMed, 2022.12.19

こんにちは。ワールドカップが開催される4年に1度だけサッカー好きになるジェイミーです。

先日のサッカーワールドカップ2022カタール大会の決勝を見て、やっぱりワールドカップを超えるスポーツイベントは存在しない、と改めて実感したアルゼンチン×フランスの試合でした。アルゼンチン優勝と言う単純な勝敗だけでなく120分の3対3になるまでの試合展開、PKによる決着まで歴史に残る試合をライブで見てサッカーのスゴさを思い知らされました。4年後次回ワールドカップ2026の開催地はカナダ・メキシコ・米国の北米3カ国らしいので寝不足確定です。日本代表はベスト8の壁を破れるのか?活躍も楽しみです。

さて、これまで何度かPubMedについて書いてきましたが、先日PubMedに公開されている論文の著者名が間違っていた場合は、どうやってデータを修正すればいいのか?と言う相談がありました。

とりあえずPubMedに連絡して修正してもらうのでしょうか?
それとも自分たちで修正するのでしょうか?

実はPubMedには「 PubMed Data Management system(以下:PMDM)」と言う管理ツールがあります。

2016年末から提供が始まったこの管理ツールを利用すると、ジャーナルの発行元でPubMedに掲載されている論文のデータを修正できますので、今回はPMDMの使い方などを紹介してみたいと思います。

利用にあたっての条件

はじめにPMDMと言うツールは、PubMedに掲載されている全てのジャーナルが利用できるわけではありません。

1.1 利用条件①「MEDLINE収録誌」

まず、対象のジャーナルが「MEDLINE」に収録されているジャーナルである必要があります。

MEDLINEとPubMedの関係は、PubMedで論文が検索されるようになるまで」のシリーズで説明しておりますが、MEDLINEはアメリカ国立医学図書館が管理・運用している2次情報データベースで、厳しい審査があり採択となったジャーナルのみが収録されます。

PMDMは「MEDLINE収録誌」のためのサービスとなりますので注意してください。

なお、PubMedにはもう一つ「PMC」と言うアメリカ国立生物工学情報センターが管理・運用している1次情報データベースのオープンアクセスオンライン論文アーカイブサイトのメタデータも含まれています。PMCからインデックスされたPubMedのデータを修正するには、このPMDMを利用せず直接PMCのデータを修正するとPubMedに反映される仕組みになっています。

1.2 利用条件②「NCBIアカウント取得」

PMDMを利用するには「NCBIアカウント」が必要となります(PubMedを利用されている場合は、すでに取得されているかも知れません)。

NCBIアカウントは、以下URLのログインページにある「New here? Sign up」から手順に従って取得します。

https://account.ncbi.nlm.nih.gov/

NCBIログイン・アカウント取得ページ

アカウントを取得したあとは、PMDMが利用できる権限を電子ジャーナルの公開先の管理者に付与してもらう必要があります。

今回の相談ではJ-STAGEで論文を公開しているMEDLINE収録誌で、J-STAGEからPubMedに書誌情報メタデータを送付しているジャーナルのため、J-STAGEセンターへPMDMを利用したいと連絡してもらいました。

参考として、J-STAGEはPubMedを含め世界の様々な学術情報サービス機関に対して掲載記事の書誌情報メタデータを提供し、データ連携(※)をしています。PubMedには、MEDLINE収録誌であることがデータ連携の条件となっていて、PubMedの画面にはJ-STAGEへのリンクアイコンが表示されます。
※2022年12月時点のデータ連携先はPubMedを含め29機関です。
J-STAGEの外部連携機関/サービス一覧は以下URLから確認できます。
https://www.jstage.jst.go.jp/static/files/ja/pub_linkservice.pdf

PMDMの権限の付与は、J-STAGEセンターへ依頼書を提出する必要があります。依頼書が届いたら必要事項を記載して提出すると、取得したNCBIアカウントにPMDMが利用できる権限を付与してもらえます。

また、J-STAGEセンターからPMDM設定完了の連絡とあわせて利用マニュアルがもらえますので、利用マニュアルに従ってPMDMのサイトへアクセスしてログインします。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management

PMDMの使い方

2.1 機能紹介

ログイン後のトップページはダッシュボードが表示されますが、PMDMで出来る事はヘルプページに6つ記載されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/

PMDMヘルプページ

PMDMのサイトは英語ページのみですが、今はブラウザの翻訳機能が利用できるのでページを英語から日本語に切り替えれば以下のようにまぁまぁそのまま利用できます。

※画像は英語ページをChromeのGoogle Translateで日本語に変換した画面です。

①Submitting an XML file(XMLファイルの提出)
論文のXMLファイルをアップロードする
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/submitting/

②Adding a citation manually(引用を手動で追加する)
論文を画面から追加する
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/adding/

③Searching citations(引用の検索)
論文を検索する
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/searching/

④Editing a single citation(単一の引用の編集)
論文の書誌情報を修正する
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/editing-single/

⑤Editing a batch of citations(引用のバッチを編集する)
複数論文のジャーナル情報や日付を一括修正する
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/editing-batch/

⑥Deleting citations(引用の削除)
論文を削除する
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/deleting/

また、FAQページも充実しており、知りたいことはだいたい書かれています。

FAQページ
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/management/help/faq/

2.2 修正例

今回は著者名の修正と言うことで、論文の書誌情報を修正する「④Editing a single citation」から著者の項目を選択し正しい著者名へ修正します。

以下の編集画面は日本語変換前の英語ページですが、書誌情報それぞれの項目についてスクリーンショット付きで修正方法が記載されているので、迷うことはないと思います。

画面は日本語変換前の著者名編集ページ

J-STAGEの利用マニュアルも同じようにスクリーンショット付きとなっていますので合わせて見てもらうと良いと思います。

J-STAGE連携時の注意点

PMDMを利用してPubMedのデータを修正しても、データ連携元となるJ-STAGEの論文データは修正されません。(J-STAGEでデータ修正してもPubMedのデータは修正されないと言う事でもあります。)

論文データが間違っていた場合は、まずはJ-STAGE側のデータを別途J-STAGEの記事訂正機能を利用して修正してください。

そのうえでPubMed側のデータをPMDMで修正しましょう。

データ修正をしないまま放置しているとPubMedとJ-STAGEで違う著者名が表示されるため、閲覧者にジャーナルの信ぴょう性を問われる事につながりますので注意が必要です。

2022年もありがとうございました。

PMDMについては、Googleで「PMDM」や「PubMed Data Management system」と検索しても日本語ページがなかったのでご参考になればと思います。

アトラスではJ-STAGEやPMCで記事を公開するためのXMLデータ作成を通してPMDMの使い方などもサポートしておりますので、ジャーナルに関わるご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。
https://www.atlas.jp/services/journal/support

今年も残すところあと少しですね。2022年は11のコラムをお届けしましたが、何か気になったり参考になったりしたコラムはありましたでしょうか。

2023年もいろいろなコラムをお届けする予定ですので、引き続きジャーナルカフェをよろしくお願いいたします。

それではよいお年をお迎えください!See You Next Year !!