ご存知ですか?②  ジャーナルにも「SEO対策」があるんです。

J-STAGE, 2019.09.04

こんにちは。

先週、久しぶりにブログを書いてみたら意外とすんなり書けてしまったので、気を良くして続けて投稿する佐藤です。今回はジャーナルの「SEO対策」についてです。

「SEO対策」といっても一般的な検索エンジン向けの対策ではなく、ジャーナルの世界ではちょっと変わった対策が必要になります。ご存知の方も多いかと思いますがご一読ください。

 

1.皆さんはネットで買い物するときに、楽天やアマゾンのトップページから商品を探しますか?

楽天やアマゾンなどのネット通販を利用するときに、皆さんは通販サイトを訪れて通販サイトで検索するということ、ほとんどないと思います。

きっとGoogleなどで商品名などを検索して、表示された検索結果から直接その商品ページに訪問されることが多いのでしょう。

これは、それぞれの通販サイトがGoogleなどの検索エンジンが商品を探しやすくするようなサイト構成やプログラム記述(HTMLなど)をすることで、検索結果の精度が向上し商品紹介ページに利用者を的確に誘導できるように工夫しているからなのです。

これが通販サイトなどでの「SEO(Search Engine Optimization)対策」となります。

論文を探すときも同様で、Google Scholar、Web of ScienceやScopus、そして大学機関などではOPACや各種ディスカバリーサービスを皆さんも利用されており、そこから直接該当する論文を読まれていることと思います。

…と、ここでちょっと考えてみましょう。なぜ、これらの外部のサービスから的確に論文を探すことができるのでしょうか?

 

2.J-STAGEなどの大規模ジャーナルサイトでは、各種外部サービスに論文を見つけるうえで重要な情報を提供しつづけています。

じつはJ-STAGEなどでは、掲載されている論文が様々な学術検索サービスから発見されやすくなるように、XMLというデータ形式で情報を提供しつづけています。


これによって、外部サービスで検索された論文が提供された情報をもとに「探されやすさ」を向上させることができるようになります。

また提供される情報にも大きく2種類の情報があります。

ひとつは「ジャーナル名・巻/号/ページ・論文タイトル・著者名・要旨(アブストラクト)」等の最低限の情報、これを「書誌情報」といいます。もうひとつは上記「書誌情報」に加えてさらに、論文の「全文情報」を提供することもできます。

 

3.「書誌情報」だけでなく「全文情報」を提供するほうが論文が探されるうえで、より効果的なのです。

「書誌情報」だけの提供ですと検索対象となる情報量が限られてしまいます。「全文情報」を提供することにより論文を探している利用者にとって、さらに精度の高い検索が可能となります。

そして全文を単なる文字情報で提供するのではなく、「構造化された情報形式(=XML)」で提供することにより、利用者の利便性は飛躍的に高まるのです。

これは論文の書誌情報だけをXMLで記述(書誌XML形式)するだけでなく、全文をXMLで記述することで実現できるのです。これを「全文XML形式」での記述といいます。

 

4.「全文情報」をXML記述することで、さらに大きなメリットがうまれます。

「全文XML形式」で論文を記述することにより利用者の検索利便性を向上させるだけでなく、さらに大きなメリットがうまれることとなります。

J-STAGEなどで「全文XML形式」で記述された論文を登載することで、論文の全文がPDFダウンロードをしなくてもサイト上に表示されるようになるのです。これを「全文HTML公開」といいます。

Googleの提供するWebブラウザであるChrome(クローム)などでは、表示するサイトを自動的に翻訳してくれる機能を提供しています。

これによりJ-STAGEなどのサイトに表示される論文を「日本語から英語に」「英語から日本語に」といった具合に自動で翻訳表示が可能となります。論文自体が「書誌情報」だけサイト表示されるだけで「本文情報」は添付されたPDFにしかない、という状態ですとChromeなどの自動翻訳の恩恵をうけることはできないのです。

「英語の論文を日本語で読みたい日本の研究者」や「日本語の論文を英語や中国語で読みたい海外の研究者」のニーズを満たすためにも、「全文情報」がサイト上に表示されていることが「ジャーナルの国際情報発信強化」にとっても、とても大切なこととなります。

以上を整理しますと、論文を「全文XML形式」で記述するメリットとしては前述の「検索精度が大きく向上される」と「ブラウザ翻訳機能の恩恵をうけられる」があげられます。

また、デメリットとしては「全文をXML形式で記述しなければならない」ということでしょうか。

 

5.アトラスではJ-STAGE公開に必要なPDFと全文XMLデータを作成、全文HTML公開を実現するサービスを開始しました。

アトラスでは2008年から論文公開に必要なデータを作成し、J-STAGEやPMCのジャーナルサイトに公開するサービスを行ってきておりました。

そして今春より「著者最終稿からPDFファイルと全文XMLデータを作成し、J-STAGEでの全文HTML公開まで実施する一連のプロセス」をパッケージ化して「ジャーナル公開支援サービス」として開始しております。

今回の「ジャーナルのSEO対策と国際情報発信強化」の実現に向けてご興味がありましたら、アトラスの「ジャーナル公開支援サービス」の紹介ページを是非ともご覧ください。

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