ジャーナル小話① 冊子のジャーナル無料配布をやめた学会の話

J-STAGE, 2018.12.11

いよいよ平成最後の12月になりました。

そろそろ年賀状の準備をしないといけない季節です。SNSのおかげで学生時代の友人など簡単につながれるようになりましたが、年賀状は毎年出しているので、今年は思い切ってスターバックスコーヒーの年賀状にしようと思っているジェイミーです。

今年もいろいろな事務局へお邪魔させていただきましたが、最近ちょっとビックリした話を聞きましたのでご紹介したいと思います。

 

会員特典としてのジャーナル無料配布

アトラスのお客様でもある学会は、学術大会などを開催することで研究の発表、情報・意見の交換などの場を研究者に提供し、その成果をジャーナルなどの形で発行することを主な事業としています。このジャーナルを発行するには、多くの手間と費用がかかっています。

手間と費用をかけたジャーナルですが、多くの学会は入会してもらった会員への特典として発行した冊子(印刷物)を無料配布(郵送)しているケースがほとんどです。

さらに冊子(印刷物)を発行しているジャーナルでは、電子ジャーナルとしてJ-STAGEなどに公開しているケースもあります。

 

ジャーナルの無料配布は会員特典なのか?

今回お話をうかがった事務局は医学系の学会で、今年(2018年度)から会員へジャーナルの冊子(印刷物)の無料配布を中止して、希望者には有料で販売。ジャーナルはJ-STAGEへ公開している論文を会員限定で読めるようにしたそうです。

中止に至った理由を聞いたところ、会員数は約3,000人ほどいるのですが、冊子(印刷物)発行にかかる費用の問題に加えて、異動などがあっても会員から送付先の変更届が出されないため宛先不明で戻ってくることが多く、事務局にとっては冊子を発行するたびに送付先の確認や変更手続きを電話・メールでやり取りする手間がかなり負担になっていたそうです。

それならばと会員サービスの向上も兼ねて会員管理システムを導入し会員マイページから会員自身で連絡先や送付先の情報を変更できるようにしたにもかかわらず、結果としては、会員マイページから変更してもらえない状態が続き、事務局の負担も減らないままとなり・・・・・

事務局長が「本当にジャーナルの無料配布は必要なのか?会員にとって意味があるのか?」そう思ってしまったそうです。

そこでJ-STAGEで電子ジャーナルを公開していたこともあり、理事にかけあい冊子(印刷物)の無料配布を止めることなったとのことです。

この決定に学会運営側からは「会員特典がなくなったら会員が減る」「会費値下げの話になる」などの反対も相当あったそうで、事務局も会員からクレームや問い合わせが来ることを覚悟していたそうです。

 

まさかの結末

会員には数か月にわたり送付物やメールやウェブサイトで冊子(印刷物)の無料配布中止と有料化について告知をして無料配布終了後、最初のJ-SATGE公開を迎えた結果は・・・・

なんとクレームもなく冊子の購入希望者は約3,000人のうちたった1名だけ!退会者も出ていないとのことです。

事務局だけでなく学会運営の委員も拍子抜けするこの結果に驚いたそうです。
やはり研究者が実際に論文を探す・読むときにはPCやスマートフォンなどインターネットを利用するため、J-STAGEに電子ジャーナルとして論文が公開されていれば冊子がなくなっても困らないことを改めて実感したとしみじみ話ていました。

むしろ採択されたあとに論文をできるだけ早くJ-STAGEへ公開することへの要望もあり、今後は早期公開や随時オンライン公開していくことを進めるようです。

 

上手に冊子を廃止する

今回のお話を伺った事務局の方からは、「冊子の扱いは規模にかかわらず費用を含めて課題になっている学会がたくさんあると思うので、そんな学会を後押しする意味でも事例としてコラムに掲載していいですよ」と言っていただきましたので、ご紹介させていただきました。

私も冊子の購入希望者がたった1人だったと聞いたときは「え?・・・えっっ!?!?!?」と思わず声が出てしまいました。

他の学会では、ある時期からピタッと冊子を廃止してしまうケースもあるようですが、この学会のように、まずは希望者に販売するところからスタートし、希望者が少ないことを理由に段階を踏んで冊子の廃止につなげると会員の理解も得られて良いのではないかと思いました。

 

それでは平成最後のクリスマス。思い出に残るよう楽しみましょう。
メリークリスマス See You Later !!